「ザ・ボイス」無き時代に

ニッポン放送で月曜日から木曜日、16時から17時半まで放送していた番組「ザ・ボイス そこまで言うか!」の放送が、3月29日をもって終了した。3月30日にはイベントも開催され、それをもって有終の美を飾った。

北海道から関西へ転居した私である。この放送をリアルタイムで聞く機会にはほとんど恵まれず、podcastでアップロードされる放送内容を心待ちにしていた。

始まりは高校時代だった。センター試験に向けて「政治・経済」という科目を勉強しなくてはならなかった私は、podcastでニュース番組を探した。そこでランキングの上位にあったこの番組を聞き始めた。

思えば、いわゆるアベノミクスが何なのか、そういうことを学んだのは、全てこの番組だった。

この番組の素晴らしい点を挙げればキリがない。

例えば、ニュースが毎日複数紹介される点。

時間の長さはものに寄るが、昨今の森友問題のように、あらゆるワイドショーが注目し続けるニュースは、7つ紹介されるニュースのうちの1つでしかない。常に他の6つのニュースに目を向け続ける。これがどれだけ大切なことか。

国内情勢に、あるいは選挙の情勢に関心を寄せる一方、海外の情勢も紹介される。アメリカの大統領くらいしか知らなかった私が、フランスやドイツの大統領・首相、アメリカの閣僚の名前まで覚えるようになった。

他にも、コメンテーターが良い。もちろん完璧な人々ではない。

長谷川幸洋さんは国際情勢などの予想を外すこともままあったし、有本香さんは小池都政批判に終始しすぎる傾向があったし、青山繁晴さんは信憑性の不確かな情報をたくさん、それもかなり長く話すように感じられた。

しかしながら、それも愛嬌だ。むしろ、完全無欠の知識人かのような顔をして話す夜のニュースのコメンテーターなどよりも、ずっと信用が置けた。

そういったコメンテーターは、確かに所謂保守派論客に偏っていたかもしれない。しかしそれだけではなく、例えば宮崎哲弥さんが山本太郎議員を呼んで、自由党の経済政策を褒めるなどというシーンもあった。そのたびに、この番組の言説を盾にしていた保守派をヒヤリとさせた。そういう、突沸を防ぐ沸騰石的な役割も担っていた。

そして、何より、飯田浩司アナウンサーの合いの手は素晴らしい。話を聞くだけでなく、コメンテーターが言葉に詰まっていると、そっとそれを補い、聴取者の付いてこられないような言葉には端的に解説を加える。解説が更に発展するようなフリ。そして、被災地の取材などには──陳腐な言葉になってしまうかもしれないが──真心を感じた。

1時間半の番組の中で、40分から50分はニュース解説に割かれていたらしい。7本、それに加えてコラム的なコーナー。そうとは言え、これほど贅沢な番組は、テレビ・ラジオを見回してもそう無いのではないか。

ネット配信の虎ノ門ニュースと比較する人も多いが、残念ながらクオリティは断然こちらの方が上と言わざるを得ない。

そうした、有益な番組が終わってしまう。勝谷誠彦さんの降板などを見てきた私は、そこに何かしらの力が働いたのではないかと勘繰らずにはいられない。

そして、朝に飯田アナは新番組を始めるらしい。

2時間の番組とはいえ、朝にどれだけのニュースを紹介できるのか。そしてコメンテーターも相当入れ替わる。宮崎哲弥さんがお出になられない上に、須田慎一郎さんと鈴木哲夫さんが代わりに入られる。心強いとは言えない面々である。

ここで一つの歴史が幕を閉じる。そしてそれは、保守が冷静さを保ちつつ、落ち着いた批判を向けられる時代の終焉かもしれない。そう考えると、残念ながら今の私には絶望しか残らない。

私だけは、最後の最後までその精神を受け継ぐ人間でありたいと思うのだが。