映画『十二人の死にたい子どもたち』

以下ネタバレを含みます。 まず結論から言えば、そこそこの出来だった。 事前に原作小説を読んでいたが、小説のほうがだいぶ出来が良かったろうと思う。 というのも、この映画、後半部分の脚本と音楽については、ほとんど絶望的だった。 音楽について言えば…

ボカロについての書きなぐり part.2

raku-rodan.hatenablog.com 前回の内容は、つまりボーカロイドは作曲者であるPたちによってそのキャラクターが肉付けされていくはずが、かえってそれぞれのPがボーカロイドを所有することで、その人気が落ち着いていってしまった、ということ。 その中で、人…

文学部病について

どういうわけかトレンド入りまでしてしまった「古典は本当に必要なのか」というイベントのYouTubeの中継を、一応一通り見て、思うところがあり、ただそれは結局「文学部病」の話なんじゃないかと思ったので、メモがてらさしあたり。 まず、「古典は本当に必…

ボカロについての書きなぐり

ある準備のために、ボカロについて考えたことを書いておく。 ボカロ草創期から衰退まで ボカロがなぜ一時期あそこまで盛り上がったのかという点について、多分死ぬほど論考や論文が出てるであろうことを丸ごと無視すると、やっぱりその第一の魅力は、誰でも…

「ニッポンのジレンマ」2019元日スペシャルについて

この2年くらい、「ニッポンのジレンマ」の元日スペシャルを見るのが恒例になっている、というのも今年が2年目なので「恒例」と言って良いものか怪しいのだけれど。 というのもやはり「朝まで生テレビ」への失望感というのがある。「朝生」は昔はどうだった…

「ゾンビランドサガ」を考察しようと試みる

theyakutatas.hatenablog.com 上記の記事をもとに、「ゾンビランドサガ」について考えていきたいと思う。と言いつつ、あのアニメが果たしてどれほどの考察に耐えうるかという強度の問題は全く未知数なので、途中から破綻をきたすかもしれない。 その上で、記…

ドラマ「僕らは奇跡でできている」

タイトルが何を意味するのか。つまり、「奇跡でできている」とはどういうことなのか。あまり分からない気はするのだけれど、それでもこのドラマの意義があるとすれば、それは発達障害を描いたこと、ということになるでしょう。 作中において、相河一輝が発達…

映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使い』

さて、「ハリー・ポッター」シリーズの魅力はどこにあるのか。 魅力的な魔法の世界? いや、違うと思う。というのも、実際には魔法を取り扱った作品はたくさんあったはずだし、「ハリー・ポッター」でなくてもいい。 今までも有名なファンタジーはたくさんあ…

旧XOY系マンガ論序説

はじめに 「外見至上主義」(T.Jun) 「私は整形美人」(メンギ) 「女神降臨」(yaongyi) 映画『ビューティー・インサイド』 「アンタッチャブル」(ZINI) 「私のアイドル」(HOY) 「君とのツナガリ」(ちーにょ) 「偽装不倫」(東村アキコ) 「水の中…

本を読んで賢くなることと語り合うこと

本を読むと賢くなる。というのは、まさにこの一年実感していることだった。 自慢じゃないが、今年は本を読む年だった。実はそれでも足りないくらいの読書量が自分には求められているのだが、それでも人生でも屈指にたくさん読んだ年だった。 主軸は文学に据…

ドラマ「フェイクニュース」と野木亜紀子の可能性

軽めの野木亜紀子論、ぐらいなつもりで書きたいと思いますが、「フェイクニュース」というドラマを見て、やはりこれは凄かった。 と言うのも、「逃げるは恥だが役に立つ」にしたって「アンナチュラル」にしたって、1クールあるドラマだと、それなりの話の中…

私的反幸福論

なぜこれを書くのか、まず『反‐幸福論』という本があるようですが、それを読んだわけではありません。また、三大幸福論と言われるような種の本を読んだからでもありません。 まず第一に近頃周囲の人が賢そうな記事を書いているのに(その知的水準にはとても…

映画『サクラダリセット 前篇・後篇』

サクラダリセット 前篇 発売日: 2017/09/08 メディア: Prime Video この商品を含むブログを見る サクラダリセット 後篇 発売日: 2017/10/06 メディア: Prime Video この商品を含むブログを見る 「ゲーム的リアリズム」なる語が提起されて、それを基にして作…

ドラマ「サバイバル・ウェディング」

冒頭を割いて吉沢亮の魅力を書き尽くしたいところですが、少し抑えます。それでも書かないわけにはいかないので、一段落だけお付き合いください。 最初に吉沢亮を見たのは「仮面ライダーフォーゼ」で、違う高校からやってきたミステリアスなキャラクターが、…

拝啓「死にたい」と言わせない社会へ

先日ふと死にたいというようなツイートをすると、それが原因でアカウントが凍結された。それを凍結と呼んで良いのか分からないが、該当のツイートを削除することを強要された上に、12時間アカウントが閲覧以外で利用できなかった。 該当のツイートの内容は上…

アニメ「アンゴルモア 元寇合戦記」

一応アニメの最終話を迎えたので、書いておこうと思います。原作がどのような展開で、それがどういう風な評価を得ているのか、分かりません。それを踏まえて、ご覧いただければと思います。 アニメ単体で言えば、それほど評価できないだろう、と思います。 …

冷笑と糾弾の限界

先日辻村深月の『凍りのくじら』を読みました。 凍りのくじら (講談社文庫) 作者: 辻村深月 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2008/11/14 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 45回 この商品を含むブログ (146件) を見る 実はここ数ヶ月、辻村深月作品を初期…

映画『ミッドナイト・イン・パリ』

ミッドナイト・イン・パリ(字幕版) 発売日: 2016/05/18 メディア: Prime Video この商品を含むブログ (3件) を見る アカデミー賞脚本賞作品。 「脚本賞だけ?」と思わないこともないが、見ると納得する。 舞台はパリで、アメリカでそこそこ売れている脚本家…

『orange』色の後悔はなぜ恋愛漫画になるのか。

高野苺さんによる『orange』という漫画があります。数年前に相次いでアニメ化、実写映画化されたこともあり、それほど知名度が低い作品ではないと思います。 作品の骨子はこのようです。 高宮菜穂、須和弘人、村坂あずさ、茅野貴子、萩田朔らの通う長野県松…

アニメ「多田くんは恋をしない」

まず言えば、この作品は特段の名作ではない。むしろ既視感ある場面の連続と言っても過言ではなく、それを一種の間テクスト性と捉えるのは無理があるだろうし、同語反復となることを恐れずに言えば典型かつ王道のボーイ・ミーツ・ガールと言った具合か。 主人…

映画『クソ野郎と美しき世界』

クソ野郎と美しき世界 メディア: Amazonビデオ この商品を含むブログを見る SMAPを抜け、ジャニーズを抜けた3人の主演映画。「新しい地図」というのがNEW MAPであり、東西南北を「地図」に繋げると NEWS MAP、つまりNEW SMAPに繋がって「新しいSMAP」になる…

TikTokについて考える。

TikTokなるものが密かなブームだそうだ。 ネット老害に片足突っ込んでいる私は、それに眉をひそめて「素敵な自己顕示欲だこと」だなんて自分にはないキラキラをひがんでいたのだが、数日前についにアプリをインストールした。 そもそも、どこの誰とも知らな…

北条裕子「美しい顔」を擁護する。

感想を書いた記事を2つほど上げましたら、その作品が芥川賞候補になるわ、盗作疑惑が出るわで大変です。 アクセス数がグッと増えてしまって、中身のない記事を晒されていて、恥ずかしい気もするわけですが。 盗作疑惑を「世に問う」らしく世間に公開される…

映画『君と100回目の恋』

君と100回目の恋 発売日: 2017/06/23 メディア: Amazonビデオ この商品を含むブログを見る 芥川賞候補の某作品に盗作疑惑が……当の掲載雑誌の方は「参考文献をつけ忘れただけ」と言っていますし、そうなのかな、と思いますが、何が不幸って、その作品について…

北条裕子「美しい顔」

群像 2018年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/05/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 大変に申し訳ない。いや、本作についてはこちらの記事で紹介したのだが、かなりセンチな感じが出ていて、実は記事の半分以上は自分の震…

東日本大震災のこと(北条裕子「美しい顔」)

※こちらは私個人の震災体験が半分以上を占める記事です。小説「美しい顔」に焦点を当てた記事がございますので、こちらをご覧下さい。 raku-rodan.hatenablog.com 群像 2018年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/05/07 メディア: 雑誌 こ…

朝井リョウ『星やどりの声』

星やどりの声 (角川文庫) 作者: 朝井リョウ 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2014/06/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (8件) を見る 朝井リョウはポリフォニックな作家である。 と言えば、ミハイル・バフチンの著作や「ポリフィニー」の…

ドラマ「おっさんずラブ」と同性愛表象のこれまで

ドラマ「おっさんずラブ」が放送を終了した。2016年の大晦日にスペシャルドラマが放送されたところから考えると、なんだか長いような、それでいて放送が7話で終了したことを考えると短いような。 そんなわけで、「おっさんずラブ」についての記事が世の中に…

辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫) 作者: 辻村深月 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/09/28 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫) 作者: 辻村深月 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012…

アニメ「プラネテス」

プラネテス Blu-ray Box 5.1ch Surround Edition 出版社/メーカー: バンダイビジュアル 発売日: 2009/09/25 メディア: Blu-ray 購入: 5人 クリック: 50回 この商品を含むブログ (48件) を見る 「プラネテス」の原作は漫画だ。でも漫画は読んだことはない。だ…